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固有受容性神経筋促通法(PNF Techniques)
Proprioceptive Neuromuscular Facilitation Techniques


 

 

PNFは、1940年代後半、Harman Kabat M.D., Margaret Knott R.P.T., Dorothy E. Voss R.P.T.によって発表された治療法である。

当初、如何にしたらポリオの患者の筋力回復(回復過程)を早められるかをテーマに研究がなされた。

PNFの哲学、基本原理、方法(手順)は、解剖学、人間発達、運動学、行動科学、神経生理学等を基礎にしている。PNFの原理や方法を効果的にするためには、セラピストは患者の持つ残存機能を十分に引き出し、用手的に、あるいは視覚的手段で患者の本来の機能障害を評価しなければならない。そして患者の機能の改善を促通しつづけるためにセラピストは熟達した十分なハンドリングと患者に対する適切な指示が要求される。また、治療を個々の患者のニ−ドに順応させるためには、直感的かつ、独創的な能力も養う必要がある。

            目      次             

ー P N F 理 論 編 ー 

[ 定義   DEFINITION ]

[ 基本哲学  BASIC PHILOSOPHY ]

[ 基本原理  BASIC PRINCIPLES ]

[ PNFの変遷 ]

[ 基本テクニック  BASIC TECHNIQUES ]

  A.マニュアル・コンタクト Manual Contact

  B.最大抵抗 (Appropriate) Maximal Resistance

  C.牽引および圧縮  Traction  and  Approximation

  D.伸 張 Stretch

  E.口頭による指示 Verbal Stimuli

  F.視覚刺激 Visual Stimuli

  G.促通パタ−ン Pattern of Facilitation

  H.タイミング Timing

[ 特殊テクニック Specific techniques ]

  A.リズム的開始法 Rhythmic Initiation

  B.反復収縮 Repeated Contraction

  C.等張性収縮の組み合わせ運動 Combination of Isotonics

  D.拮抗筋の逆運動   Reversal  of  Antagonists

   1.等張性収縮による拮抗筋逆運動 Isotonic Reversals

             a.スロ-・リバ-サル Slow Reversal

             b.スロ-・リバ-サル・ホ-ルド Slow Reversal-Hold

   2.等尺性収縮による拮抗筋逆運動 Stabilizing Reversals

      a.リズミック・スタビライザ-ション Rhythmic Stabilization

  E.リラクセ-ション・テクニック Relaxation Techniques

   1.コントラクト・リラックス Contract Relax

   2.-ルド・リラックス Hold Relax

 

ー P N F 実 技 編 ー

[頭部及び頚部のパタ−ン]

[体幹上部のパタ−ン        Upper Trunk

[体幹下部のパタ−ン        Lower Trunk

[基本的上肢パタ−ン Upper Extremities

[基本的下肢パタ−ン  Lower Extremities

[抵抗マット訓練      Resistive Mat Ex.

[基本動作:起床動作

[立位 STANDING / 歩行 GAIT 

[その他補助的手段    Iceの利用

[片マヒの治療プログラム(PNFテクニックの応用)

 

[ 定義   DEFINITION ]

 

Proprioceptive (固有受容器性の)     

.筋緊張、関節の位置の変化、頭部の肢位の動、不動により刺激される

.感覚受容器(筋紡錘、腱紡錘、関節結合組織、耳内受容器等)

.それ自身の動きでその組織細胞の内部に刺激を受ける

 

Neuromuscular   (神経筋)

.神経と筋に関する

 

Facilitation  (促通法) 

.あらゆる自然過程を促進すること(促通)すなわち抑制の逆

.容易にすること

.インパルスの通過によって神経細胞の中に生みだされる効果

 

すなわち、固有受容性神経筋促通法(proprioceptive neuro-muscular facilitation techniques)とは、固有受容器を刺激することにより神経筋機構の反応を促し早める方法である。

 

[ 基本哲学  BASIC PHILOSOPHY ]

 

A.PNFの基本哲学は、″すべての人間(障害者を含む)には潜在能力がある″を前提としている。しかるべき要求を作り出して反応を引き出すよう努力すれば、その潜在能力を伸ばすことができる。動作を繰り返し反復すると、学習効果があり、身体活動の技能(skill)を熟達させ、協調性を獲得することができる。身体活動を継続的に実施すると、耐久性が向上し、また、動作に変化をつければ回復効果があり、疲労が和らぐ。

      

.効果的な治療プログラムはセラピストと患者に依存し、お互いの治療目標と目標にむけられる努力は合致していなければならない。

  

.患者の機能的活動が改善され、かつ遂行できるように治療の方向は導かれなければならない。 

  

.治療はいつも前進的で、患者が身体的、情緒的に実際に遂行できる動作を利用し、さらにその動作を強化していく。  

  

.学習能力には個々の特性があり、従って治療は個々の能力に合わせて実施される必要がある。これにより協調された動作が獲得される。 

 

.患者を治療する際、セラピストは神経系、整形外科系等あらゆる問題が総合的に患者の病態像に反映しているということを忘れてはならない。従って、PNFの治療法は特定の問題としてでなく、全人間的に扱われるように感覚系、筋骨格系、生理学的な要素を処理し、統合しなければならない。

 

.治療目的は、最も効率良く神経筋機構の回復を促進させ、可能なかぎり機能的改善を獲得するために患者を援助することである。

 

.患者評価のプロセスはセラピストが適切な手技を選択することにおいて本質的なものであり、その評価のプロセスは全体を通し継続される。  

 

.適切な手技は十分な姿勢や運動の発達を高めるために随意筋活動と関連しており、正常の脊髄、皮質下反射を促進するのに使われる。  

 

.最上の機能を獲得するために; 

               a.複雑な技能は個々の要素に分解できる  

               b.スタビリテ−とモビリテ−の相互作用を考慮する 

              c.全体の技術を遂行する能力は学習過程を通して促通される。

 

.異常な筋緊張、姿勢、運動は、直接的あるいは間接的な抑制によって治療され、交互運動を行なう際に強調がおかれる。

 

.最大反応を引き出すことは、患者の注意力、筋力、耐久力を増加するのに最も効果的な手段である。そして最大反応を繰り返し行なうことは、運動の学習を促進するのに利用される。

 

.得られた活動を持続させることは神経筋機構のパワ−、耐久性、協調性を改善・維持するのに本質的なものである。従って、最大の改善を得るためには、持続的な集中した治療が必要となる。

 

 

[ 基本原理  BASIC PRINCIPLES ]

 

.抵抗訓練は重要で、その使い方は多様である。

   抵抗をかけることは、日常生活の活動を高め、また、スポーツなどの技能を高める上で大変重要である。抵抗は、セラピストが運動促通パターンの中で徒手的に与える。また、起きあがり動作、立ち上がり動作、歩行などの日常の基本動作やその他の応用動作に加えて、スポーツなどではある特定の運動パターンの中で用いる。また、ゴムチューブや滑車やマシンなどを用いて自主訓練を促すことも重要であるが、できる限り、日常やスポーツで使われる機能的な動作に近いパターンで用いた方がよい。

 

.セラピストが患者にできるだけ早く運動学習させる為には、適切な課題を与えなければならない。

   例えば、ゴルフや水泳が早く上達するには、自分一人でいくら練習してもなかなかうまくならない。コーチから適切に指導してもらうと、その上達が非常に早い。

 

.集中訓練 

   訓練を集中的に実施することは、機能向上に大変重要である。PNFの本拠地、米国カリフォルニア州のヴァレホにあるカイザー病院では、1日に4.5 ? 6時間の集中訓練が患者に実施されている。集中訓練をすることで、以下の効用が考えられる。

               a.循環の改善       improve circulation

               b.代償作用の促進        substitute pathways

               c.言語機能の改善        speech

               d.動作や筋力の増加      increase movement and strength

               e.最小のエネルギー消費で最大機能の獲得

 

[ PNFの変遷 ]

 

  -----1940年代 -----

Kabat(神経生理学者)は Kenny (Nrs.) Polio に対する治療法を神経生理学的に分析した。

Kaiserの援助のもとに、Kabat-Kaiser研究所をワシントンD.C.に設立し、神経筋疾患のリハについての研究を始めた。

            

1948

 Kabat は、California Vallejo に第2研究所を設立しKnott (PT) と研究を開始

  Sherrington, Gerrhorn, Hellebrandt, Pavlov 等を参考文献とし て「 Studies on  Neuromuscular Dysfunction」を発表。

 この中の基本的な考え方は以下の6原則に基づく。

 

       神経再教育の基礎となる生理学的原則

    .反復練習

    .習慣化するまで実施

    .相反神経支配を応用する

    .「単純 」→ 「複雑」な運動へと段階的に行う

    .「意志集中」の持続による学週過程

                        

                  「動作の自動化」

    .運動単位の発射頻度によって筋活動の強さは制御される

           

-----1950年代 -----

臨床的応用を試行錯誤した時代

 

1951

Spiral & Diagonal(螺旋的で対角線に)の運動パターンが確認された。

       mass  movement  pattern に関わる筋群に効果的な伸張を加え、筋紡錘を刺激し促通現象を生じさせる為。

促通パターンは Gelhorn の研究と Kabat らの緻密な観察によるもので、エネルギー効率の良い作業、スポーツの動作分析と筋の解剖学的構造の確認による。

 

1952

臨床経験と生理学的研究に基づき、運動マヒに有効なテクニックが臨床的に応用された。

       1.  resistance

       2.  Stretch

   これらの理論は以下のような Gellhorn の研究を基礎にしている。

   「運動皮質が閾値下刺激でも固有受容器刺激の加重により、筋の収縮を引き起こすことができる。」

                

    つまり、収縮を起こしたい筋に抵抗と伸張を与えることで筋は反応しやすくなる。

       3. Reversal of Antagonists

      この理論は、Sherrington により発見された継時誘導

      Successive induction )現象を応用している。

                 ↓

   「ある強い運動が終了した直後には、その運動に拮抗する運動が促通される」

       4. Relaxation

                    

1952

100Hzの低周波刺激と Sherrington の発見した相反神経支配(ある運動が開始すると、その運動の拮抗筋群は抑制される。)の現象を応用し、痙性筋のリラクゼーションを実施。

 overflow現象(加重現象)を応用することで残存機能を最大  限に活用できることを外傷性脊髄損傷の例を通して報告して  いる。

Rhythmic  Stabilizationによって随意的等尺性収縮を促通することにより、二次的に生じる筋不均衡の矯正と随意的同時収縮障害を改善し小脳失調と共同運動不能の症状に有効であると報告した。

Voss OT に対して PNF を啓蒙する意味で以下のような要点を述べ Kinetic OT PNF 応用を提案した。

1PNFの促通パターンは機能的運動パターンに似ている。

2)手の訓練には、まず近位である体幹、肩などの機能の確立が運動発達的にも重要である。

3Activities の発達には、耐久性が必要であり、抵抗の多様な応用の繰り返しで耐久性を獲得できる。

 

1954

Kabatは職場を変わり、イギリスの PT PNF を紹介した。

施設名がKaiser Foundation Rehabilitation Centerと変更になる。

      

1956  

PTである Knott Vossは「Proprioceptive Neuromuscular Facilitation Patterns and  Techniques」の初版本を発表。

        

----- 1960年代  -----

対象疾患の大きな変化があった。

Polio の新患はほとんどいなくなり代わりにCVA、頭部外傷、脊髄損傷が主な対象疾患に代わった。

中枢神経系障害のアプローチとして,頚と体幹の機能の確立や正常な発達段階に従わなければならないことが強調された。

寝返り、四つ這いなどの促通パターンを組み合わせた全体的パターンの応用が必要となった。

痙性筋の痙性の減弱に対して Cold  Therapy も併用された。

脳卒中後遺症の片麻痺患者の治療プログラムの考慮されるべき事項として以下のことが挙げられた。

   1)身体の左右側間の相互作用の回復

   2)随意運動における運動パターン均衡の回復

 

1961         

世界的に普及した Licht の運動療法の中に Kabat が神経生理学的理論背景を中心とした PNFを紹介した。

 

1968       

PNF」第2版が発刊される。

  初版本に Facilitation of total patterns,Stimulation of vital and related function